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聖歌は生歌

聖歌は生歌

主の変容

25 栄光は世界におよび

【解説】
 詩編97は「主は、王である」という信仰告白から始まる詩編です(典礼用詩編では主を神と言い換えています)。ギリシャ語訳とラテン語訳では「ダビデの歌 彼の国が回復したとき」という表題があるので、ダビデの王国が再興されることを願って歌われたとも考えられますが、教会的な解釈では神の国が最終的に完成する終末論的な意味が込められていると言えるでしょう。詩編の一節で歌われる「雲」「霧」「正義」「さばき」は主である神の現存を表すものを擬人化したものと言えます。このような主である神の支配のもとに神に従う民が、どのように神に従い、神に賛美をささげ、神の国の喜びにあずかることができるかが後半の7節以下で歌われます。
 答唱句は冒頭、音階の第三音から、上行音階の、しかもユニゾン(すべての声部が同じ音)で始まり、四声に分かれる「世界」で、旋律は前半の最高音Cis(ド♯)に達しています。この間、バスは、「栄光は」から「世界」で、6度下降跳躍しています。これは、作曲者が「時間と空間を超越した表現」として用いる、旋律の6度の跳躍の反行にあたります。これによって、また和音の広がりによっても、神の栄光の世界への広がりが現されています。その後の「世界におよび」で、旋律は音階で属音E(ミ)に下降しますが、天におられる神の栄光が、世界(全地)に行き渡る様子が示されます。
 後半、旋律は和音構成音で上行し、「かみ」で、答唱句全体の最高音D(レ)に達し、バスとの広がりも、2オクターヴ+3度という、原則として、もっとも広いものになり、神の栄光、神の偉大さが現されます。最後の「神は偉大」には「-」(テヌート記号)が付けられており、これによって、このことばが一音節づつ力強く歌われるようになっています。
 詩編唱は、高音部のCis(ド♯)から力強く始まり、落ち着きと壮大さをもって、音階で下降します。

【祈りの注意】
 解説にも書いたように、答唱句は全体、力強く歌います。しかし、冒頭のユニゾンの上行音階は、cresc. したいので、最初から f では、後が続きません。最初は、やや、弱め(ただし精神は冒頭から力強く)で歌い始めましょう。「世界に」で、前半の最高音になりますから、のどと胸を開いて歌いましょう。バスは、特に力強く、また、深い声で歌ってください。その後、旋律は、いったん下降しますから、少し、dim. するとよいでしょうか。「すべてを」からは、また、上行しますので「かみ」に向かって cresc. しましょう。最後の「神は偉大」は「-」(テヌート記号)がついていますから、答唱句の中では、もっとも力強く、地面を踏みしめるように歌いますが、一つ一つが飛び出したようになってはいけません。あくまでも、祈りとしてふさわしい、レガートの中でのテヌートであることを忘れないようにしましょう。
 テンポは四分音符=66ですが、あまり、早くなると、せっかちに聞こえます。力強さを現すためにも、雄大さが感じられるテンポを考えましょう。だからといって、冒頭のユニゾンがだらだら歌われると、全体のしまりがなくなります。ここは、階段を一気に駆け上がる気持ちで歌うとよいのではないでしょうか。
 主の変容の祝日は主日の場合は第一朗読でダニエルの預言が、第二朗読としてペトロの手紙が朗読されますが、主日に当たらない場合はどちらかを選択して第一朗読として朗読することになっています。いずれにしても、週末における神の国の完成を予告する朗読となっていますので、ギリシャ語訳やラテン語訳の表題にもふさわしいものです。
 一節の第1小節では「神は王、」と読点がつけられています。ここは、詩編唱の歌い方としては例外の息継ぎとしての八分休符を入れます。とは言え、ここで祈りの流れを止めてはいけません。休符とは「音がない状態」ではなく「ない音がある」ところであり、そこは祈りが続いてゆく緊張感が満ち満ちています。
【オルガン】
 答唱句の性格からも、「創造主への賛美」という詩編の性格からも、明るいストップがよいでしょう。フルート系を基本にして、黙想の妨げにならなければ、プリンチパル系を加えることも方法です。
 解説にも祈りの注意にも書きましたが、だらだらとした歌い方にならないためには、まず、オルガンの前奏が、最初のユニゾンの部分をふさわしいテンポをとらなければなりません。かと言って、早すぎてもいけません。本当に、この答唱句の祈りにふさわしいテンポを取るためには、何度も、繰り返してみることが必要になってくるかもしれません。根気よく、ふさわしいテンポを探してゆきましょう。音が簡単な分、なおさら、準備が大切になってきます。最後のテヌート記号がついている部分も、一つ一つが飛び出したようにならによう、延ばし方、切り方を考えてください。


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